なぜ、1日の野菜は350gなのか

ブックレポート

今回から、また新しい本をご紹介します。

前回、どうして私がこのブログを始めたかをお話しました。

▼前回のブログ

管理栄養士が本をシェアする理由

これを書いて、私自身も初心に返りました。

そして今回、私が新人管理栄養士さんに最初に読んでほしい本を選びました。

それが、

「佐々木敏のデータ栄養学のすすめ / 東京大学大学院教授 佐々木敏著」

この本では、栄養学の根本的な部分をメタ・アナリシス*で分析し解説をしています。

*メタアナリシスmeta-analysis):複数の研究の結果を統合し、より高い見地から分析すること、またはそのための手法や統計解析のこと。 

例えばタイトルの「1日の野菜350g」は何が根拠なのか。

みなさんはご存知でしょうか?

ちなみに私は全く知らなかったです。笑

  



「1日の野菜350g」は厚生労働省が定めている

この数字は厚生労働省の「健康日本21」で定められています。

▼健康日本21についてはこちら

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そして肝心の、350gは以下のように説明されています。

カリウム、食物繊維、抗酸化ビタミンなどの摂取は、循環器疾患やがんの予防に効果的に働くと考えられているが、特定の成分を強化した食品に依存するのではなく、基本的には通常の食事として摂取することが望ましい。これらの摂取量と食品摂取量との関連を分析すると、野菜の摂取が寄与する割合が高く、平成9年で成人の野菜の1日あたりの平均摂取量は292gであるが、前述の栄養素の適量摂取には、野菜350~400gの摂取が必要と推定される9)ことから、平均350g以上を目標とする。

厚生労働省HPより https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b1.html

要は、循環器疾患・がん予防にカリウム・食物繊維・抗酸化ビタミンが有効であるり、十分量摂取するために350g必要としているわけです。

しかしここで佐々木先生は、「野菜じゃなくても摂れるんじゃない?もっと他に理由があるんじゃない?」と問いかけます。

野菜の量と死亡率には関係があるか

まず、本当に野菜を食べるほど病気が予防できるのでしょうか。

本文中では野菜摂取量とそう死亡率との関連を検討した4つのコホート研究の結果をまとめています。

すると、確かに野菜を多く食べる人の方が死亡率は減少傾向ではあります。

ただし、非常にあいまい。基準値を作るのは厳しい結果です。

心筋梗塞など循環器疾患による死亡率は低下していました。

でもこれは、350gの数字の根拠にはなりません。

(図を載せられなのでまじで読んでほしい)

「350g」は何者なのか

ポピュレーションアプローチとハイリスクアプローチ、覚えていますか?

管理栄養士国家試験では必須単語ですね!!

ポピュレーションアプローチは集団への対策、

ハイリスクアプローチはターゲットを絞った個人への対策でした。

今回、「1日の野菜は350g」は厚生労働省が健康日本21で掲げています。

つまり、「国」が「国民全員」に向かって投げかけているのです。

つまりこれは、ポピュレーションアプローチということ。

ポピュレーションアプローチで大事なことは、

より多くの対象者(今回なら国民)の心に響くことです。

少しでも多くの人に響けば、その集団全体にいい結果が出ます(今回なら死亡率低下)。

佐々木先生はこの多くの人に響くために「350g」を設定したのではと主張しています。

国民になじんでもらえるように設定した数字と考察しています。

 



大事なことは数字じゃない

350gはあくまで目安です。

数値そのものにこだわる必要はないという結果でした。

それよりも、なんだかちょっと多めな「1日の野菜は350g」を国民により浸透させ、

”野菜を食べようと思う人を増やす”

ことに重点を置いた数字であると考察されました。

たぶん、栄養に興味がない人もこの数字は聞きなれていると思うから

イメージ付けとしては成功している気がする。

今回は根拠が少し曖昧になってしまいましたが、

・どうして野菜は1日350gなの?

・カリウム、食物繊維、抗酸化ビタミンが取れる他の食材は何だろう?

などなど、

「こういうものなんだ」を見直すきっかけになれば嬉しいです。

栄養学はわからないことがまだまだたくさん。

一緒に勉強していきましょう~~~!

▼参考著書

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