前回から紹介している「佐々木敏のデータ栄養学」の著者である東京大学大学院教授の佐々木敏先生は栄養疫学を専門としています。
疫学は、人の集団を対象として、健康に関するデータを測定、収集し、整理・分析して、健康問題の実態を明らかにし、問題の所在やその原因、解決方法を探り、有効な改善策や解決策を提案するための科学です。
この本は、あらゆる研究、そしてそのメタ・アナリシスを基に考察される内容が書かれています。
その一例が前回の投稿「なぜ、1日の野菜は350gなのか」です。
感動した・驚いたエピソードはたくさんありますが、1番この本の核である部分を紹介します。
朝食はごはん派?パン派?
「あなたの朝食はパンですか?ごはんですか?その他1日で何を食べますか?」
こんな感じの質問を約2000人の女子大生に行いました。
そして朝はほぼ毎日ごはんのひとを「ごはん派」、パンの人を「パン派」と分け、
2グループが1日全体で食べている食品群を比較した研究があります。
すると、パン派と比べてごはん派の方が野菜・大豆類の摂取量が多く、乳類・菓子類の摂取量が少ないことが分かりました。
あなたは栄養士です。ごはん派の人が特に気を付けなければならないこととして何をアドバイスしますか?
正直、乳製品が不足している→牛乳やチーズを増やすという流れが自然でしょう。
ではもう1つ質問です。
なぜ、「乳製品を増やす」必要があるのですか??
乳製品が少なければカルシウムが足りないからと答える人が多数でしょう。
でも本当にごはん派の人の方がカルシウムは少ないのでしょうか。
栄養素で考えよう
実はこの研究には続きがあります。
食品群から、栄養摂取量も計算し集計していたのです。
するとどうでしょう。
ごはん派とパン派でカルシウムの摂取量に大きな違いはありませんでした。
というのも、ごはん派の人たちは小松菜や大豆製品といった野菜・大豆類からしっかりカルシウムを摂っていたのです。
「乳製品が少ない=カルシウムが足りない」というわけではないということです。
1つの栄養素に1食品といった考え方ではなく、
全体像を見て、栄養価計算をして分析を行い、本当に不足/過剰しているものは何か、解消のためには何をすればいいのかを考えることが大事ですね。
ちなみに、今回の章では「ごはん派の人たちに特に気を付けなければならないこととして何をアドバイスしますか?」の答えは何だったと思いますか?
それは”減塩”です。
栄養摂取量を計算したところ、ごはん派はパン派よりも塩分が過剰であることがわかりました。
たしかにごはんのお供は塩分高いですからね・・・。
栄養価計算をしよう、だって栄養士なのだから

実際、パン派でも塩分は過剰だし、ごはん派もパン派もカルシウムは不足傾向です。
でも今回はのポイントは「○○を食べていないから××が不足しているだろう」、
「○○を食べすぎているから控えよう」と単純にとらえないことです。
あらかたイメージを付けるのは大事ですが、イメージに引っ張られすぎないよう本当はどれだけ摂れてるの?どのくらい足りないの?が計算できるようになるとかっこいい栄養士に近づけそうですね。
私自身、卒業してからは栄養価計算をしてこなかったので自分の食事から見てみようと改めて思いました。めざせ、かっこいい栄養士。
▼参考著書