脳神経外科医が教える私たちに足りないもの

ブックレポート


前回は体の多くを占めるタンパク質についてお話ししましたが、
今回は必要な量が数グラムまたはそれ以下なのに、不足しやすいビタミン・ミネラルについてのお話です。
参考著書で特に重視している3種類を解説します。

▼前回のブログはこちら

だいたいみんな鉄不足


タンパク質と同じぐらい日本人に不足している栄養素、それが鉄分です。
「貧血=女性」のイメージを持っていませんか???
たしかに女性は特に注意が必要ですが、男性にもリスクがあります。

糖質制限において、鉄分は特に重要になります。
糖質制限をすると、ミトコンドリアで脂肪からエネルギーが作り出されます。この時、鉄はミトコンドリアにとって必須アイテムなのです。鉄が少ないとミトコンドリアがうまく働けず、体調不良になりやすいのです。

「鉄欠乏→貧血→酸素供給不足→ミトコンドリアの活性低下」の流れは考えやすいでしょう。しかし、ミトコンドリア自体にも鉄が必要というのは栄養士でも盲点なのではないでしょうか。

味覚だけが仕事ではない亜鉛


栄養士ならば、亜鉛不足と聞くと味覚障害をあげるでしょう。
だから糖質制限に亜鉛が関わることに違和感があるかもしれません。

ですが、亜鉛は鉄の次に多いミネラルです。タンパク質・DNAの合成に関わる酵素の材料で、新陳代謝や酵素活性、脳の働きに重要です。また、亜鉛は鉄と同様ミトコンドリアにも必要です。つまり亜鉛は、エネルギーを作るためにも、タンパク質を作るためにも欠かせないミネラルということ。糖質制限に限らずみんな必要な栄養素ですね。

前述したような大事な作用がある鉄と亜鉛は、メンタルの栄養学・離乳食などこどもの栄養学でも超必須ミネラルです。このブログでもたびたび出てくる予定なので、以後お見知りおきを。

骨だけではなかったビタミンD

ビタミンDで出てくるキーワードは日光!骨!というところでしょうか。たしかに、ビタミンDは日光(紫外線)に当たると皮膚で生成されます。そして、カルシウムとマグネシウムの血中濃度を調整すること・カルシウムが骨に沈着することを助ける作用があります。

しかし、最近ではビタミンDの作用はもっと幅広いと言われています。

ビタミンDが不足すると骨粗鬆症だけではなく、うつ、糖尿病、自己免疫疾患、アレルギー疾患などの病気のリスクが高まるというのです。さらに、高血圧のリスクが高まり、心筋梗塞の発症率が上がるそうです。

ビタミンDは紫外線から生成されることもあり、どれだけ食べればいいのかを数字で表しにくい栄養素です。しかし著者は、自身の実験を重ねたうえでアトピーや花粉症などのアレルギー疾患がある人は、食生活や日光よくを意識したうえで毎日25㎍ほどをサプリで摂取すると良いでしょうと主張しています。

自分のアップデート


余談ですが、私は大学の卒業論文でビタミンKを扱いました。ビタミンKも骨や血液凝固が連想されるでしょう。しかし私が研究していたのは「ビタミンK(メナキノン)による抗がん作用の作用機序」でした(ほんの一部ですが)。何が言いたいかというと、ビタミン・ミネラルにはまだまだ明かされていない作用があるということです。だからこそ栄養士は、教科書がすべてだと思わずいろんな本や研究に触れて知識をアップデートしていってほしいと私は思うのです。

そのアップデートにこのブログが役立ってくれたらこの上なくうれしいです。

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